食物アレルギー
食物アレルギーは、本来なら体に害のないはずの食べ物に対し、免疫システムが過剰に反応してしまうことで起こるものです。乳幼児から大人まで幅広い年代にみられ、原因となる食べ物や症状の出方は人によって違います。皮膚や呼吸器、消化器など、複数の臓器に症状があらわれることもあり、ときには命に関わる重い反応を引き起こすこともあります。本記事では、食物アレルギーの特徴や主な原因、現れる症状、診断の流れ、そして日常生活で気をつけたいポイントまで、アレルギー治療の専門家がわかりやすく紹介します。
目次
食物アレルギーの特徴について
ヒトには、食べ物を異物と認識せずに栄養として吸収する免疫システムが備わっています。しかし、この免疫システムに異常がある場合、本来は体にとって無害な食べ物を異物と過剰に認識してしまうことがあります。この反応を食物アレルギーと呼びます。
食物アレルギーの患者さんは、ある特定の食べ物を食べたり触れたりした後に、異物と認識された食べ物の成分に対してのみアレルギー反応が生じます。 アレルギーの原因となる物質はアレルゲンと呼びますが、食物アレルギーのアレルゲンは、主に食べ物に含まれるタンパク質です。
食物アレルギーにはいくつか病型があります。そのほとんどは即時型という種類であり、原因となる食べ物を食べると、2時間以内にさまざまな症状があらわれます。このWebサイトの情報は、特に断りがなければ、即時型食物アレルギーに関する説明をしています。
食物アレルギーがある子どもの割合は乳幼児では5~10%、学童期以降は1~3%と減っていきます。乳幼児の食物アレルギーの原因となりやすい鶏卵・牛乳・小麦については、成長とともに食べても症状がでにくくなるとされています。一方、ナッツ・木の実類や甲殻類(えび・かに)といった他の原因食物はなかなか食べられるようにならないと考えられています。学童期以降、成人の食物アレルギーがある人は、原因食物に注意して生活する必要があります。
食物アレルギーと間違えやすい病気がいくつかあります。食べ物に付着した細菌やウイルスなどの病原体やその毒素によって生じる「食中毒」、体の中の酵素がうまく働かないために症状が出たり、食べ物に含まれるヒスタミンなどの物質でアレルギーに似た症状があらわれたりする「食物不耐症」があります。これらと食物アレルギーの区別は専門の医師による正確な診断が必要です。
食物アレルギーの原因食物について
食物アレルギーの原因となる食べ物は、鶏卵、牛乳、小麦が多く、そのほかには木の実類、ピーナッツ、甲殻類(えび・かに)、魚卵、魚類、果物類などさまざまあります。最近は、木の実類(特にクルミ、カシューナッツ)の増加が著しく、令和4(2022)年の消費者庁全国調査では、クルミが牛乳よりも多くなり、鶏卵に次いで2番目に多い食物アレルゲンとなりました。また、新規発症の原因食物アレルゲンは年齢により大きく変わるため、世代ごとの注意点が異なります。

食物アレルギーの症状について
食物アレルギーの症状は皮膚、呼吸器、消化器などさまざまな臓器にあらわれます。およそ90%に皮膚症状、およそ30%に呼吸器症状や粘膜症状が認められます。
- 皮膚:皮膚が赤くなる、蕁麻疹(じんましん)、かゆみ、熱感、湿疹
- 粘膜:目の充血、むくみ、かゆみ、まぶたの腫れ、鼻水、鼻詰まり、くしゃみ、口・唇・舌の違和感、腫れ
- 呼吸器:喉の違和感、かゆみ、かすれ声、飲み込みが難しい、咳、ぜん鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)、胸部圧迫感、呼吸困難
- 消化器:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、血便
- 神経:頭痛、活気の低下、眠気、不穏、意識障害、失禁
- 循環器:血圧の低下、頻脈、徐脈、不整脈、四肢冷感、蒼白
これらの症状は、1つだけあらわれる場合もあれば、複数の臓器にあらわれることもあります。アレルギー反応によって、複数の臓器に重い症状が急速にあらわれ、命を脅かしかねないものをアナフィラキシーといいます。アナフィラキシーのうち、血圧低下や意識障害などの症状があわさるものを、アナフィラキシーショックと呼び、特に注意が必要です。
特殊な食物アレルギーについて
食物アレルギーには、一般的によく知られている即時型タイプのほかに、特定の条件下でのみ症状が現れたり、特有の仕組みで反応が起きたりする特殊なタイプも存在します。ここでは、代表的な特殊型の食物アレルギーの特徴を紹介します。
1)食物依存性運動誘発アナフィラキシー
(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)
アレルゲンを含む食べ物を食べたあと、4時間以内に運動をしたときにだけ症状が起きる食物アレルギーです。食物アレルゲンを食べただけでは症状はあらわれず、運動が組み合わさることで症状があらわれる特徴があります。
症状はじんましんの他、呼吸器の症状や血圧の低下などのアナフィラキシーとなる可能性がある食物アレルギーのタイプです。原因食物として小麦、甲殻類が多く、果物による場合も増加しており、運動量の増加する中学生以降、成人に多い特徴があります。
診断は、食物経口負荷試験(実際に被疑食物を食べて症状が起きるかを確認する試験)に運動を組み合わせて症状の出現を確認します。
2)口腔アレルギー症候群
(oral allergy syndrome:OAS)
アレルゲンを含む食べ物を食べると、速やかに口周囲の発赤や口腔内の腫れ、違和感、のどの痛みや違和感などが生じる食物アレルギーです。症状があらわれても、多くはしばらくすると自然に軽快し、全身症状は出にくい傾向があります。これらの症状は、食物アレルゲンが口腔内粘膜などに触れて起こる接触反応と考えられています。原因となりうる食物として、花粉症に関連した果物・野菜が多いですが、それ以外の食べ物でも起こります。
口腔アレルギー症候群のなかで、特に花粉とのアレルゲンの類似性によって果物や野菜などでOAS症状があらわれるものを、特に花粉-食物アレルギー症候群(pollen food allergy syndrome:PFAS)と呼びます。花粉症やラテックス(天然ゴム)アレルギーのある人は注意してください(「花粉症」の項目を参照してください)。PFASの原因アレルゲンは加熱加工や消化酵素によってタンパク質の構造が変化するため、低アレルゲン化(アレルギーを起こす力が弱まる)します。例えば、新鮮なリンゴを食べるとOAS症状が起きても、リンゴジャムやアップルパイなどに加工されると症状があらわれず、食べられる方も多くいます。
3)新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症
(非IgE依存性食物アレルギー、新生児・乳児消化管アレルギー)
新生児期から乳児期早期に発症する、消化管症状を主体とした食物アレルギーです。一般的な食物アレルギー(IgE依存性)とは異なり、IgE抗体を介さない免疫反応によって起こるため、血液検査でIgE抗体が陽性にならないことが多く、即時型アレルギーのような蕁麻疹や呼吸困難などの症状は通常みられません。
原因食物は牛乳(育児用ミルク)と卵黄が最も多く、症状は嘔吐、下痢、血便、腹部膨満、哺乳不良、体重増加不良などが中心です。症状のあらわれ方によって、食後数時間で激しい嘔吐を繰り返す急性型と、慢性的な下痢や血便、体重増加不良がみられる慢性型に分けられます。急性型では脱水やショック状態に至ることもあるため注意が必要です。
診断は、症状の経過と原因と疑われる食物の除去による症状改善、および食物経口負荷試験(除去後に再び摂取して症状が誘発されるかを確認する試験)によって行います。
多くの場合、1〜2歳頃までに原因食物が摂取できるようになりますが、耐性獲得の時期には個人差があるため、定期的に医師の指導のもとで負荷試験を行い、摂取可能かどうかを確認していくことが大切です。
食物アレルギーの重症度について
食物アレルギーでは、あらわれる臓器の症状の強さで重症度が分類されます。
- 軽症:皮膚症状が部分的で消化器症状も弱く、元気がなくなる程度です。
- 中等症:皮膚症状は全身に広がり、がまんできないほどのかゆみをおこしたり、軽い咳き込みや息苦しさ、吐き気、眠気があらわれる場合があります。
- 重症:全身症状があらわれ、強い腹痛や嘔吐を繰り返し、便失禁や、ぐったりして意識を消失する場合があります。重症では生命の危険もあるため、ただちにアドレナリン自己注射薬(エピペン®)や点鼻薬(ネフィー®)を投与して救急搬送を要請して治療を行う必要があります。
食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の関係について
食物アレルギーの子どもはアトピー性皮膚炎による皮膚のかゆみも伴う方も多いため、アトピー性皮膚炎の原因が食物と思われがちです。特に離乳食が始まる生後5〜6ヶ月児の保護者が誤解する傾向があります。皮膚の症状が見られる方はむやみに食事制限をするのではなく、専門の医師に相談するとよいでしょう。
食物アレルギーの診断について
食事のあとに何らかの症状があらわれたときは、食物アレルギーを疑います。特に、初めて口にする食べ物を食べたときに症状があらわれることが多く、食物アレルギーの場合はその後、同じ食べ物を食べるたびにくり返し症状があらわれるようになります。医師に相談する際には、何を、どれくらい食べて、何分後に、どのような症状があらわれたのかを伝えましょう。
食物アレルギーの診断には、その反応がアレルギーによって起きていることが重要です。それを確認するために、医師は血液検査や皮膚テストによって食べ物ごとのIgE抗体(アレルギー症状を起こしうる物質)の有無を検査します(「アレルギー検査について」を参照してください)。ただし、これらの検査はアレルギー反応が体の中で起きている可能性を調べるまでであり、陽性だからといって、食物アレルギーの診断にはなりません。
食物アレルギーを診断するには、疑わしい食物アレルゲンを摂取することによって症状が起きることが重要です。診断を確実にするためには、実際に病院でその食べ物を食べてみて、症状があらわれるかどうかを確認する「食物経口負荷試験」が必要になることがあります。
食物経口負荷試験は、ときにはアナフィラキシーを含めた重い症状を引き起こすことがあるため、病院で十分な準備を整えて、安全に実施する必要があります。このため、すべての診療所や病院で食物経口負荷試験が実施できるわけではありません。かかりつけ医に相談し、食物経口負荷試験が実施できる病院を紹介してもらいましょう。なお、医師の指示なく保護者の判断で自宅などで試しに原因と疑われている食べ物を食べることは非常に危険なので、絶対にやめましょう。
食物アレルギーの治療について
食物アレルギーの診療は、症状があらわれないようにすることと、あらわれてしまったときに適切に対応できるようにすることが2本柱となります。症状があらわれないようにするためには、誤食しないように生活できる力を患者さんと保護者の方々が身につけることが重要です。また、症状があらわれてしまったときに症状の重症度を見きわめて、適切な対応(アドレナリン自己投与薬の扱い方を含めて)を行える力を日頃から身につけることが重要です。
症状があらわれないために身につける力
食物アレルギーと上手に付き合っていくためには、日常生活の中で症状を起こさないための工夫を身につけることが欠かせません。正しい知識があるだけで、安心して食事を楽しめる場面が増えます。ここでは、普段の生活で特に役立つポイントとして「除去食」と「食品表示の理解」を見ていきましょう。
除去食
食物アレルゲンを必要最小限のレベルで食生活から除きます。人によって食物アレルギーの重症度は異なり、例えば重症でない患者さんは、原因食物が少量ならば食べても症状があらわれない場合があります。また、食物によっては、加熱など加工調理をすることで、低アレルゲン化(アレルギーを起こす力を弱める)され、食べられる範囲が広がるものもあります。特に鶏卵・牛乳・小麦は普段から食べる食事によく含まれているため、完全に除去するよりも、食べられる量を見つけて食べ始めることで、食生活の幅を広げることができます。最近の研究では診断された早期からごく少量であっても食べ始めることが、耐性獲得しやすくなる(治りやすくなる)可能性があることが分かっています。前述のように診断するためだけでなく、症状が出ずに食べられる安全な量を確認するためにも食物経口負荷試験が行われます。
なお、医師の指示なく保護者らの判断で自宅などにおいて試しに原因食物を食べ始めることは非常に危険なので、絶対にやめましょう。家庭でアナフィラキシーを含めた症状が起きかねません。
また、除去食をする場合、特に複数の食べ物にアレルギーがある場合、必要な栄養素がバランスよく摂れなくなる場合があります。栄養的にバランスのよい食生活を送るためには、代用できる食品などの上手な利用が必要です。医師や管理栄養士に相談し、具体的に指導を受けるとよいでしょう。
食品表示について

誤食を防ぎながら食生活を豊かにするために、食品表示を知る必要があります。わが国では、あらかじめ袋・箱、カン・ビンなどで容器包装された加工食品にはアレルギー表示に関するルールが食品表示法で決められています。食品表示を理解し活用することで、安心安全な加工食品を手に取ることができます。加工食品の原材料表示欄において、表示することが義務の8品目:卵、乳、小麦、そば、落花生(ピーナッツ)えび、かに、くるみ(2023年より)、カシューナッツ(2025年度より)と、表示することが推奨されている20品目:アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンに関する取り決めがあります。
義務表示の8品目のアレルギー患者は、原材料表示欄に自分の食物アレルゲンの記載がなければ、その加工食品は安心して食べることができます。一方で推奨の20品目の場合は、記載されない可能性があるので販売会社に確認して利用することが賢明です。
また、外食(レストラン、ファストフードなど)や中食(店頭で量り売りされる食品やその場で包装される食品、注文して作られる弁当、デリバリーフードなど)においては、アレルギー表示に関するルールがありません。このため、誤食リスクが高く、注意が必要です。特に重症患者は外食・中食利用は細心の注意を払うか、利用しないことも選択肢に入れておくべきです。
消費者庁Webサイト「食物アレルギー表示に関する情報」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
症状があらわれたときのために
誤食をしてしまったときに、何らかのアレルギー症状があらわれることがあります。このため、症状の重症度に合わせて適切な対応が行えるように、日頃から準備しておく必要があります。特にアナフィラキシー症状や過去に重い症状が出たことのある患者さんは、誤食に備えてアドレナリン自己投与薬の処方を受け、打つタイミング、打ち方をしっかりと医師や薬剤師に習い、またそれを維持しなければいけません(「アナフィラキシー」の項目を参照してください)。
一方で、皮膚(部分的な蕁麻疹、かゆみ)、粘膜(部分的な腫れ)、消化器(軽い腹痛、嘔気、繰り返さない嘔吐)、呼吸器(繰り返さない軽い咳)など軽症のみの場合は慌てる必要はありません。抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬)があれば内服し、症状の進行がないか安静にして観察することで対応できることも多いです。
経口免疫療法について
鶏卵・牛乳・小麦アレルギーの多くは6歳までに耐性を獲得します。それまでに治らなかった子どもや、それ以外の食物アレルゲンによる食物アレルギーは、生涯除去が必要になることもあります。
こうした食物アレルギーの患者さんの症状が出現する量(閾値)を上げ、なかには自由に食べることも目指せる方法として、経口免疫療法が取り組まれるようになりました。経口免疫療法は、きわめて少量の食物アレルゲンから、医師の管理・指示のもとで慎重に、かつリスクを取りながら食べる量を増やしていくことで、閾値を増やしていく方法です。
摂取が出来るようになる子も多くいますが、一方でそこに至るリスク管理は困難を伴い、また起こりうる副反応は注意が必要です。経口免疫療法は、保険診療ではなく研究的に行われ、食物経口負荷試験や経口免疫療法の経験豊富な施設において行われています。実施には、医師からの十分な説明、保護者と患者さん自身の理解と同意が必要です。 経口免疫療法の実施希望がある場合、まずは主治医に相談してみましょう。
食物アレルギーのよくある質問
食物アレルギーについてのよくある質問をまとめました。
食物アレルギーは免疫が関わる病気であり、多くは食物の成分として含まれているタンパク質が原因となります。一方、食中毒は、食物に付着したウイルスや細菌のほか、毒キノコなど、本来、食べてはいけないものに含まれた毒などが原因で生じる病気であり、免疫機能は関係ありません。
乳糖不耐症はアレルギーではありません。牛乳などには乳糖が多く含まれています。特に成人では、乳糖を十分に消化できず、下痢などの症状が引き起こされることがあり「乳糖不耐症」と呼んでいます。これは免疫を介するアレルギー反応ではありません。
卵(鶏卵)や牛乳、小麦が多いことが知られています。魚介類(魚卵を含む)、ピーナッツや果物類、ソバ、甲殻類(エビ・カニ)なども原因になりやすく、そのなりやすさは年齢とともに変わる傾向にあります。近年は原因食物としてクルミやカシューナッツといった木の実類も非常に増加しています。
食物を材料として用いた加工食品も原因となるので、発症した人が食事をする際は、食品表示を確認するようにしてください。
食物アレルギーでは、原因となる食べ物を摂取すると全身にさまざまな症状があらわれます。食物アレルギーの症状には、皮膚症状(じんましん、発赤など)や口腔内症状(口の中がかゆい・イガイガするなど)の軽い症状から、消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など)や、呼吸器症状(咳、ゼーゼー・ヒューヒューする呼吸、呼吸困難、声がかすれるなど)、全身症状(ぐったり、意識もうろう、唇や爪が青白いなど)があります。症状があらわれる時間は、原因となる食べ物を摂取して数分間以内から数時間後まで幅広く、症状の進み方もさまざまです。症状のなかでも、声がかすれるなどの呼吸器症状は、空気の通り道がむくんで狭くなっていく危険性があります。このような緊急性が高い症状(アナフィラキシー症状)があらわれたら、すぐに救急車を呼び、さらにアドレナリン自己投与薬(商品名:エピペンなど)を携帯しているときには迷わず速やかに使用します。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
鶏卵とウズラの卵には「交差反応性」がありますので、鶏卵と同様の対応が必要です。
乳化剤とは、水と油を混合してクリーム状にするものであり、牛乳ではありません。主に卵黄、大豆、牛脂などから作られます。除去は必要ありません。
卵殻カルシウムはほとんどタンパク質を含んでいませんので、加熱した状態(焼成)でも、加熱しない状態(未焼成)でも、ともに摂取することができます。乳糖には、1gあたり数μg(マイクログラム)のタンパク質が含まれる場合があり、重症の牛乳アレルギーのごく一部にわずかな軽い反応を示すことがありますが、ほとんどの牛乳アレルギーでは問題ありません。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
多くの品目の食物除去が必要な場合には、限られたメニューになるために栄養素が偏りがちになり、栄養不良になることがあります。特に、牛乳を除去することによりカルシウムが不足しがちです。意識してカルシウムを摂取しないと、本来であれば必要な量の半分も充足されていないことがあります。牛乳だけでなく、食物除去をするように指示を受けたら、除去する食材に含まれる栄養素を補うための食べ物(代替食)を積極的に摂取する必要があります。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
もともと食べていて症状が出ない場合には摂取しても問題ありません。食べたことがない食物を食べる場合はアレルギー症状が出る可能性がありますので、医師への相談が必要です。
原因となる食べ物の除去を解除するときには、「食物経口負荷試験」を受けて、安全に食べられる量を確認したうえで、医師が判断して進めていきます。1度だけではなく、繰り返し食物経口負荷試験を実施して、食べられる量を段階的に徐々に増やしながら除去解除を目指します。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
全国の主な実施医療機関は、「食物アレルギー研究会」ホームページから検索することができます(https://www.foodallergy.jp/ofc/)。食物経口負荷試験を実施する施設の状況は地域によって異なりますので、あらかじめ情報を集めておきましょう。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
「食物経口負荷試験(しょくもつけいこうふかしけん)」では、該当する食べ物を複数回に分割して、症状の誘発がないことを確認したうえで、徐々に量を増やしながら摂取することで、アレルギー症状の有無や、どの程度の量でどれくらいの重症度の症状があらわれるかを確認します。食物経口負荷試験の結果によって、該当する食べ物の除去を継続するか、どの程度の量が摂取できるかなどの指導を受けることができます。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
乳児の湿疹が治りにくい場合や、複数の食べ物の除去が必要となる場合、原因となる食べ物の診断が難しい場合、そして原因不明のアナフィラキシーを繰り返すような場合には、アレルギー専門の医療機関で調べる必要があります。食物アレルギーを正確に診断して、原因となる食べ物の適切な除去・解除を進めるためには、「食物経口負荷試験(しょくもつけいこうふかしけん)」を行っている医療機関を受診する必要があります。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
保険診療外でそのような検査がありますが、米国や欧州、日本アレルギー学会および日本小児アレルギー学会では、食物アレルギーにおけるIgG抗体検査は診断のときの有用性を公式に否定しています。その理由として、①食物抗原特異的IgG抗体は食物アレルギーのない健常な人にも存在する抗体であること、②食物アレルギーを確定診断する食物経口負荷試験の結果と一致しないこと、③血清中のIgG抗体のレベルは単に食物の摂取量に比例しているだけであること、よって④血中食物抗原特異的IgG抗体検査結果を根拠として原因食品を診断して、陽性の場合に食物除去を指導してしまうと原因ではない食品まで除去しなければならなくなり、多品目に及ぶ場合は健康被害を招くおそれもあるから、とされています。
子どものアレルギーを減らすために強く勧めることができる食事はありません。特定の食物を摂りすぎたり、避けたりすることなく、バランスのよい食事を心がけましょう。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
妊娠中や授乳中には、母親が特定の食べ物を避けることはせずに、バランスのよい食事を心がけてください。複数の研究結果から、妊娠中や授乳中の食事制限は子どものアレルギー疾患の発症を予防する効果がないことが示されています。さらに、過度な食事制限は、胎児や乳児の発育に悪影響を及ぼす可能性があることも指摘されています。その一方で、妊娠中に特定の食物を過剰に摂取することは、生まれてくる子どもの食物アレルギーの発症を促進する可能性があることも指摘されています。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
母乳には多くのメリットがありますが、母乳栄養のほうが粉ミルクなどよりも子どもがアレルギーになりにくいかどうかははっきりわかっていません。母乳栄養によって子どものアレルギー疾患の発症を予防する効果を報告した研究がある一方で、母乳がアレルギー疾患の発症リスクとなる可能性を報告したものもあり、結論は出ていません。母乳には多くの有益性があるものの、子どものアレルギー疾患の発症予防のためという点では、母乳栄養に過度にこだわる必要はないと考えられます。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
食物アレルギーの発症予防を目的として離乳食の開始を遅らせることは推奨されていません。過去には、食物アレルギーになりやすい食品の摂取開始を遅らせることが望ましいと考えられた時期がありましたが、離乳食の開始を遅らせることで食物アレルギーの発症が予防できるという十分な証拠はありません。しかし、湿疹がある子どもでは、食物アレルギーの発症リスクが高いことが知られています。この場合もむやみに摂取開始を遅らせるのではなく、医療機関を受診して皮膚症状の改善を行い、離乳食の開始について相談しましょう。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
食物アレルギーがあるからといっても、原因となる食べ物以外の離乳食開始の時期を遅らせる必要はありません。医師から指示された原因となる食べ物を除去しながら、通常通りに離乳食を進めましょう。食べ物を除去することにより栄養状態が悪化しないように、必要な栄養素を含む他の食品をバランスよく食べるようにしましょう。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
幼稚園・保育所(園)や学校には、子どもの食物アレルギーの情報を具体的に知らせるために、医師が記載した「生活管理指導表」を提出します。施設では食物アレルギーの子どもにも給食を提供することを基本としていますが、子どもの重症度や、受け入れる施設の状況によって食物アレルギーへの対応は異なります。アレルギー症状への具体的な対応については、医師とよく相談したうえで、幼稚園・保育所(園)や学校に依頼する必要があります。(参考:「小児アレルギー疾患保健指導の手引き」より)
食物アレルギーについてさらに詳しく知りたい方へ
動画による解説
食物アレルギーをより深く理解していただくために、当サイトでは専門家監修のオリジナル動画コンテンツもご用意しています。文字だけでは伝わりにくい内容の理解にお役立てください。
食物アレルギーを防ぐには
小児の食物アレルギー
成人の食物アレルギー
食物蛋白誘発胃腸炎はどのような病気か
関連サイトのご案内
(日本アレルギー学会Webサイトへ)
・食物アレルギー/Q&A
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=8
・特殊な食物アレルギー/Q&A
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=9
消費者庁Webサイト「食物アレルギー表示に関する情報」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
まとめ
食物アレルギーは、食品表示の確認や除去食など、適切な知識と対処法を身につけることで、日常生活の中でコントロールしていける疾患です。また、万が一症状が出た場合の対応方法を知っておくと、いざというときに落ち着いて行動しやすくなります。
不安をひとりで抱え込まず、必要に応じて医師や専門スタッフに相談することで、過度な心配や無理な制限を避けやすくなります。正しい知識を持ちながら、日常生活に合わせて無理のない対策を積み重ね、安心して過ごせる環境を整えていきましょう。